◆「男女共同参画予算1万円」のジェンダー意識◆

ジェンダー主流化への要望

こんにちは。管理人の中村佳太です。

男女共同参画予算1万円

大山崎町議会3月議会の予算委員会を傍聴していたときのことです、傍聴者用に置いてあった資料を眺めていた僕は、ある数字を見て目を疑いました。

その数字とは、令和6年度「男女共同参画推進事業」の予算の額、それがなんと1万円だったんです。

「1万円??」

「1万円で何ができるの??」

(心の中で叫びました)

でも、「今年がたまたま1万円だっただけかもしれない」、そう思って僕はあとから家で過去の予算について調べてみました。

すると…なんとほぼ毎年1万ではないですか!

愕然としました…

(正確にはR1年以降、R2,R3,R5,R6年度が1万円で、「男女共同参画計画懇談会」が開催されたR1,R4年度は委員への報酬のためそれぞれ計9万円,17万3千円の予算が計上されていました)

近隣自治体は100倍,1000倍

このことをX(Twitter)に投稿したところかなり反響があり、「気になって自分の町の予算を調べてみたけど〇百万だった」といったコメントが複数寄せられました。それで僕はさらに気になって両隣の自治体、島本町(大阪府)と長岡京市(京都府)の同様の予算についても調べてみました。結果は下の通りです。

※参考に人口も載せます。大山崎町の人口は約1万6千人です
※予算項目の名称から男女共同参画関連予算と判断しています。抜け漏れがあるかもしれません

【島本町(人口:約3万2千人)】
<R5>98万6千円
<R4>117万7千円

【長岡京市(人口:約8万2千人)】
<R6>934万3千円
<R5>588万9千円

またまたびっくり。

人口が約2倍の島本町の予算は約100倍、人口が約5倍の長岡京市の予算は1000倍近い年もあります。このことは大山崎町の男女共同参画推進にかける予算が他の自治体と比較しても極めて低いことを示しています

使い道も怪しい??

実は冒頭の予算員会の中で、一度だけこの予算について話題になるタイミングがありました。

辻真理子議員(共産)が1万円の使い道について行政担当者へ質問しました。担当者の回答は以下のようなものでした。

「この予算は例年、研修会・セミナーにお呼びする講師への謝礼として使っている」

「ただ、研修会は人権教育として行っており、必ずしも男女共同参画と関係するものだけではない」

んっ??
いま男女共同参画の予算を男女共同参画とは関係ない研修に使ってるって言った??

このことが気になって、後日僕は大山崎町に対し情報公開請求を行い、令和元年以降の男女共同参画推進予算の使い道が分かる資料を取得しました。

入手した資料を確認したところ、ジェンダー関連の研修会を開催している年もあったのですが、委員会での担当者の発言の通り、直接的には男女共同参画と関係のない研修に予算を使っているケースがありました(入手した資料はすべて本サイトで公開しています。こちらからどなたでも閲覧可能です)。

たとえば、令和3年度は「人権意識とコミュニケーション」、令和4年度は「このまちが好きだから~被差別の歴史を持つ地域に生まれて~」という演題の研修を行っており、(どちらもとても重要かつ僕自身興味のある内容ではありますが)直接的には男女共同参画と関係のない内容です。

もし内容の一部に男女共同参画に関する話題があるのだとしても、少なくとも事前に参加者がそれを把握することはできない状態となっています。

※以下、それぞれの資料の一部です

令和3年度の人権教育の資料
令和4年度の人権教育の資料

ジェンダー不平等は人権問題なので、人権に関する予算をジェンダー関連に使うのは問題ないでしょう(大山崎町の予算には「人権教育推進事業」という項目が別途あり、上記「講師謝礼」はこの予算と男女共同参画推進予算から分担して支出されています)。でも、それとは逆に男女共同参画推進の予算をジェンダーとは直接的には関係しない人権課題の研修に使うのは予算の流用だと思います。

なぜわざわざ人権関連予算とは別出しして男女共同参画推進予算が設けられているのか?

その意味を考える必要があるでしょう。

議会報告会で議員たちに聞いてみた

4月24日の夜、大山崎町議会の議会報告会が開催されました(「開かれた議会」を目指す取り組みの一つとして初めて開催されたものです)。僕はそこに参加できたので(定員30名/事前申し込み制、それってどうなん??)、この件について議員たちに質問しました。

質問の要点は3つ。

  1. 男女共同参画推進の予算が1万円は少な過ぎないか?
  2. 予算の使い道が直接的には男女共同参画に関係ない研修に使われるのは不適切ではないか?
  3. そもそもこの件がこれまで問題視されてこなかったことは、女性議員が少なく議会がジェンダー不均衡だからではないのか?(議員12人中、女性議員は2人だけ)

回答したのは予算委員会の委員長である山中一成議員(自民党系会派)で、回答を要約すると次のような感じでした。

「予算委員会では多くの予算項目を審議する。すべての項目について詳しく見ることはできない」

「予算が適切に使われていないことについては知らなかった。教えてもらって感謝する」

「私自身、女性議員は増えてほしいと思っているがそれは有権者が判断すること。自民党としては女性に声をかけたりと努力はしている。でも現実問題としてなり手がおらず難しい」

※補足情報:2名の女性議員はともに共産党、自民党系議員は4名いるが全員男性

残念過ぎる回答です。

「すべての項目について詳しく見ることはできない」なんて、それはすなわち「男女共同参画は優先度が低いから見てませんでした」と言っているに等しいでしょう。

「予算が適切に使われていないことについては知らなかった」とのことですが、委員会で担当者が「必ずしも男女共同参画と関係するものだけではない」って言ってたんですよ?僕はその場にいてそのことを知ったんですよ?なんで同じ場にいた議員が知らないなんて言えるの?

このことすべて、議会が男性優位であることが原因のひとつであることは間違いないでしょう。

どんなに裏で努力しても有権者に対して選択肢を提示できなければ意味がありません。

僕はその場で、次の選挙で自民党が女性の候補者を出すよう強く求めました

タウンミーティングで町長と担当者に聞いてみた

議会報告会から一週間後の5月1日の夜、今度は前川光町長や町の担当者が参加するタウンミーティング(「前川光町長とふれあいミーティング」)がオンラインで開催されたので、参加しました。そして、そこでもこの件について町長と担当者に質問しました。

そもそも1万円という予算案を作り提出したのは行政側であって(議会はそれをチェックする役割)、この問題の第一義的な責任は町長および行政にあると思います。

議員らへと同様の質問(議会のジェンダー不均衡の件は除く)をしたところ、回答の要旨は以下のような感じでした。

(担当者)

「予算が少ないのはおっしゃる通りだ。担当部署の人員が不足していることもあり、近隣市町に比べて男女共同参画に取り組めていないのも実態としてその通り」

「生涯学習として様々な人権課題を扱わねばならず、幅広い人権研修の中で男女共同参画の予算を使う形となっている。目的別・事業別・性質別の予算という原則に照らしていえば、完全に適切な取り扱いとは言えないかもしれない」

 

(前川光町長)

「予算の使い方には優先順位がある」

「中村さんのおっしゃることは重々わかるので、内部で検討したい」

こちらも残念過ぎる回答です。

町長の発言の通り、ひとことで言えば町は「ジェンダーは優先度が低い」と考えているということです。そのことがよくわかり、とても悲しく腹立たしかったです。

町長も担当者もジェンダー格差や性差別の問題についてあまりにも不勉強・無理解であると言わざるを得ません。

ここで詳しくは書きませんが、いま大山崎町で課題となっているあらゆる課題にジェンダーは関係してきます。給食費無償化も、公民館の建替えも、通学路整備も、団地の老朽化も、あれもこれもすべてジェンダーの視点なしには議論できない(してはならない)問題です

そのことを理解していれば、1万円という予算の異常さも分かるはずですし、「ジェンダーは優先度が低い」などということには決してなりません。

町長や担当者にはぜひジェンダーについて勉強して、適切な予算や人員の配置をお願いしたいです。

ジェンダー主流化が必要

「1万円は少な過ぎる」

誰だってさすがにそう思うのではないでしょうか。

でも、行政も議会も(僕を含めた)住民たちも、ずっとこのことを放置してきました。

これは、ここまで書いてきたように「ジェンダーは優先度が低い」となんとなくみんなが思ってきた結果だろうと思います。

でも、もう終わりにしないといけません。

先ほども書いたように、あらゆる社会課題にジェンダーの視点が必要です。それはすなわち「ジェンダー主流化」と呼ばれるものです。内閣府男女共同参画局のウェブサイトには、「ジェンダー主流化」の定義が次のように書かれています。

「ジェンダー視点の主流化とは、法律、政策、事業など、あらゆる分野のすべてのレベルにおける取組みが及ぼしうる女性と男性への異なる影響を精査するプロセスである。それは、政治、経済、社会の領域のすべての政策と事業の策定、実施、モニタリング、評価を含むすべてのプロセスに、女性と男性の関心事と経験を統合し、女性と男性が平等に恩恵を受け、不平等が永続しないようにするための戦略である。究極的な目的は、ジェンダー平等の達成である」

大山崎町が「ジェンダー主流化」に積極的に取り組む町になることを、町民として強く要望します。

もし来年度の予算も1万円だったら、僕はマジで許しませんよ。

管理人・中村佳太

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